抄録
副咽頭間隙腫瘍の多くは良性で悪性腫瘍の占める割合は少ない。1994~2007年に慶應義塾大学病院において病理組織診断が確定した副咽頭間隙腫瘍は42例あり,このうち悪性腫瘍は6例(14.3%)であった。内訳は多形腺腫由来癌3例,唾液腺導管癌,脂肪肉腫,脊索腫が1例ずつであった。悪性腫瘍はすべて茎突前区に存在し,茎突前区腫瘍21例において悪性腫瘍が占める割合は28.6%であった。4例の術前診断は良性であり切除可能な副咽頭間隙悪性腫瘍を術前に悪性と診断することは困難であった。茎突前区腫瘍は無症候性でも経過観察せずに手術を行うべきである。術後に悪性と判明した症例に対して再手術や術後照射を施行すべきか否か判断に苦慮した。副咽頭間隙悪性腫瘍は多彩な病理組織型を呈するため悪性度や切除断端を参考にして追加治療を個々に検討するべきである。厳重な経過観察を行い再発病変の早期発見に留意し救済治療の機会を逸しないことが重要である。