抄録
ICR/JCLマウス雄36匹が18匹ずつランダムに2群に分けられ, 離乳時から行動観察時まで45±5日間, 一群は単独で飼育され, 他の一群は3匹ずつ集団で飼育された。行動観察の前日, 各個体は, 仕切りによって半分に分けられた観察ケージの一方へ1匹ずつ入れられ, 馴化のため1時間放置された。翌日の行動観察では, 各個体は, 前日同様, 観察ケージへ入れられた。そして, 10分後に仕切りが除去され, そこで生じた個体行動が20分間ビデオ記録された。実験後, 各個体の行動は, 15種類の行動項目 (Table1) に基づいて, ビデオ記録から行動項目列として記述された。こうして得られた36本の項目列は, 個体毎に対系列に分解され, 推移分析とクラスター分析が適用された。
分析の結果, 個体行動には2つのクラスターが見出された (Fig.1) 。一方は, stretchingを伴う項目より成っており (クラスター1), 他方は, それを伴わない項目より成っていた (クラスターII) 。クラスターIの内部構造は, 飼育条件間で同形であったが, クラスターIIは, rearing, pausing, face-washing周辺の部分構造に違いが見られた (Fig.2, 3) 。また, クラスター間推移確率の値は, クラスターIが個体行動の初期成分であることを示唆した (Fig.2, 3) 。これは, stretchingを示した個体数の変化を継時的に調べることによって確証された (Fig.4) 。ただし, 隔離個体では, stretchingが後々まで残る傾向があった。