抄録
中咽頭癌の治療において我々は平成11年より手術における切除断端からの再発を減少させる目的でシスプラチンを主とした動注療法を導入している。これまで中咽頭扁平上皮癌33例に対して超選択的動注化学療法を施行した。動注はセルジンガー法を用いてシスプラチン80~100mg/m2を週1回動注し,中和剤としてチオ硫酸ナトリウムを動注後に経静脈的に投与した。原発巣制御率は81.8%(27/33例)であった。全症例の5年累積生存率は69.1%であった。部位別では前壁型(10例)では72%,側壁型(23例)では70.1%と差を認めなかった。これまでの治療成績から術後の機能障害が問題となる前壁型の場合,基本的に手術は行なわず動注化学療法と放射線療法の併用での治療方針に変更された。中咽頭癌における超選択的動注療法は腫瘍の存在部位により動注する血管を適切に選択することが重要である。