2011 年 37 巻 4 号 p. 464-469
頭頸部扁平上皮癌の切除不能癌は手術が困難なだけでなく放射線の生存率も不良である。CRTが放射線単独より切除不能癌の生存率を有意に向上したことからCRTは切除不能癌の標準治療となった。加速/多分割照射のCRTは放射線単独より切除不能癌の生存率を放射線単独より有意に向上することが判明したが,加速/多分割照射のCRTと標準的分割照射のCRTの生存率は同等であることが示された。QOLの維持と関連する嚥下障害,下顎骨壊死などの晩期有害事象も放射線単独と同等であることが示された。従来のCRTとの無作為比較試験の結果がないためにその有用性は不明であるが,docetaxel+cisplatin+5FU(TPF)のNACとCRTの併用あるいはcetuximabのCRTが生存率を向上することに期待が持たれている。中咽頭癌のCRTの生存率が喉頭,下咽頭癌より良好なことが示され,その後human papilloma virusが陽性の中咽頭癌は陰性より有意に生存率が良好なことが示された。今後切除不能癌の生存率を向上する新しいCRTの開発にはその有用性を適正に評価するためにHPVの有無で層別化した臨床試験を計画する必要がある。