抄録
上顎拡大全摘後の欠損は,上顎骨・頬骨だけでなく皮膚・軟部組織から眼瞼・眼球まで広範囲に及び,三次元的な欠損であるため,整容的な再建が最も難しいもののひとつである。遊離組織移植による一次再建は有用だが,パッチワーク状の瘢痕やカラーマッチ・テクスチャーマッチの不良が問題となる。また,義眼床の再建においては,拘縮による変形や位置異常が問題となる。これらの問題を解決するため,われわれは,遊離腹直筋皮弁とエキスパンダーで伸展した頸部顔面皮弁および肋軟骨・耳介軟骨移植を用いた「3-step orbitofacial reconstruction法」を行っている。
眼窩・上顎の再建において,左右対称の自然な顔貌を獲得するためには,(1)義眼床ポケット,(2)義眼床の土台,(3)眼窩底と頬骨隆起,(4)瞼板,および(5)眼瞼・頬部皮膚の5つの要素を考慮して再建する必要がある。これら5つの要素を全て再建し良好な結果を得る上で,「3-step orbitofacial reconstruction法」は有用である。