抄録
透析患者は,癌の根治治療を困難とする種々の合併症を有することが多い。今回,下咽頭癌を合併した透析患者に対し化学放射線同時併用療法が奏効した症例を経験した。症例は10年来の血液透析歴がある進行下咽頭癌(梨状陥凹T2N2cM0)の75歳男性である。喉頭温存の強い希望に基づき最初に喉頭温存手術を検討したが,多数の基礎疾患があるため断念した。そのため,両頸部郭清術後にシスプラチンによる化学放射線同時併用療法を行った。シスプラチンは週3回の透析日に10mgを投与し,投与30分後から透析を開始した。そして透析直前と終了後に血中シスプラチン濃度を測定した。重篤な副作用なく治療が完遂し,完全寛解が得られた。血中総シスプラチン濃度は安全域上限とされる1.0μg/mlを超えることはなかった。透析患者に対してのシスプラチンを用いた化学放射線同時併用療法は,血中シスプラチン濃度をモニタリングすることで安全に施行することが可能である。