2016 年 42 巻 3 号 p. 355-358
化学放射線治療後の残存や再発病変に対して喉頭全摘出術を行った場合,術後に咽頭皮膚瘻を形成し治療に難渋することが多い。Vacuum Assisted Closure®(V.A.C.®)治療システムを用いた局所陰圧閉鎖療法(Negative pressure wound therapy:NPWT)を施行し咽頭皮膚瘻の閉鎖に至った症例を報告する。症例は68歳男性で,声門癌T2N0M0に対しS-1併用放射線治療を施行したが腫瘍が残存し,喉頭全摘出術を施行したが術後にリークを認めたため前頸部に咽頭皮膚瘻を造設した。咽頭との交通が残存した場合には治療中止となる旨を十分に説明したうえで患者の強い希望があったためNPWTを開始した。感染が増悪することなく瘻孔は縮小し,開始後41日目で瘻孔が閉鎖し,48日目に経口摂取を開始した。症例を選ぶ必要があるが,NPWTは咽頭皮膚瘻の治療の有用な選択肢のひとつである。