頭頸部癌
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唾液腺
唾液腺導管癌局所再発・多発骨転移に対しビカルタミドが奏功した1例
大江 祐一郎神前 英明松本 晃治清水 猛史
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2017 年 43 巻 4 号 p. 478-482

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抄録

唾液腺導管癌は局所再発や遠隔転移を生じやすいが,再発・転移例に対する確立した治療法はない。また,アンドロゲン受容体(AR)の発現が高率に認められる特徴を有する。今回,唾液腺導管癌の局所再発・多発骨転移に対し,抗アンドロゲン療法が奏功した1例を経験したので報告する。
症例は64歳,男性。右顎下腺癌T3N2bM0に対し手術加療を行い,唾液腺導管癌と診断され,病理学的にARの過剰発現を認めた。術後に化学放射線療法を施行したが,6ヶ月後に局所再発を認めた。17ヶ月後には多発骨転移が出現し,ビカルタミド(80mg/日)内服投与を開始した。腰痛に対して30Gy/10Frの緩和照射も行った。ビカルタミド投与6ヶ月後のPET-CTで局所の腫瘍は消失し,7ヶ月後の腰椎造影MRIでも大部分で腫瘍の造影効果が消失した。遠隔転移から1年経過し,乳房腫脹を認めているが,その他大きな副作用はない。
AR陽性の唾液腺導管癌に対して,抗アンドロゲン療法は有用な治療選択肢の一つである。

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© 2017 日本頭頸部癌学会
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