2019 年 45 巻 1 号 p. 30-33
頸部リンパ節腫大を契機に発見されるものの,様々な術前検査を施行しても甲状腺内に原発巣を認めない甲状腺乳頭癌症例が稀に存在する。これは甲状腺内に原発巣がないものであるか,術前検査にて描出できないほど原発巣が小さなものであるかのどちらかである。 2010年1月から2017年12月にかけて当科で手術治療を行った甲状腺乳頭癌216例のうち,術前検査にて頸部外側区域リンパ節への転移を認めたものの甲状腺内に原発と考えられる腫瘤を認めなかった5症例を対象とした。どの症例も,一次治療として甲状腺片葉切除,患側D2b郭清を施行した。5例中1例は甲状腺内に原発巣となる病変を認めなかった。3例は多発の腺内転移を認めた。 術前検査にて甲状腺内に原発巣を認めない乳頭癌症例において,根治性,機能温存の双方を考慮した場合,甲状腺内の腺内転移の有無に関わらず患側の甲状腺片葉切除も選択肢になると考えられた。