抄録
高齢化の進行,放射線画像診断や内視鏡診断技術の劇的な向上により,頭頸部癌の診断と同時,または異時性に他癌の存在が明らかになる症例も増加している。重複癌患者においては,複数の治療法の組み合わせや全身状態を考慮した治療の順序や方針につき,通常の頭頸部癌患者とは異なる対応が必要となる。今後急速な高齢化に伴い重複癌の患者数も増加することが予想され,その治療戦略は重要性を増している。本稿では,当院で経験した頭頸部重複癌3症例を提示し,実際に行った治療と課題について論じる。頭頸部重複癌の治療は症例ごとで条件のばらつきが大きくエビデンスに基づく治療方針の決定は容易ではない。他科との協議の上治療方針を決定することも多く,普段から良好な関係を築いておく必要がある。特に,頭頸部癌と食道癌の合併例では病変が隣接しており拡大切除や拡大放射線照射などの対応が必要になり,治療方針の決定に慎重を期する必要がある。