抄録
カルボプラチンによる難治性SIADHをきたした症例を経験したので報告する。74歳女性。上咽頭癌局所再発に対して,カルボプラチン+5-FU+セツキシマブを投与した。治療開始7日目に頭痛と食欲不振,8日目に嗜眠と上肢痙攣,著明な低Na血症(110mEq/L)をきたした。高張食塩水を投与し6時間後に意識は改善した。後日,8日目の精査で抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の診断基準に該当することが判明し,腎性塩類喪失性腎症(RSWS)との鑑別を要したが,明らかな脱水所見なくSIADHと診断した。11日目以降再度血清Na低下を認め,18日目より飲水制限を行うも血性Na値は基準値を下回ることがあった。23日目にバソプレシンV2受容体拮抗薬投与開始することで,29日目には正常範囲内に改善でき30日目退院となった。