頭頸部癌
Online ISSN : 1881-8382
Print ISSN : 1349-5747
ISSN-L : 1349-5747
症例報告
抗HER2薬が著効したHER2陽性多発転移腺癌の一例
藤山 和士橋本 浩次岸下 定弘内野 慶太中尾 一成
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 51 巻 1 号 p. 37-40

詳細
抄録
HER2陽性を示す癌腫としては唾液腺癌,乳癌,胃癌等があり,頭頸部領域では唾液腺導管癌が挙げられる。一方,頸部リンパ節転移を有したHER2陽性原発不明腺癌の報告は極めて稀である。我々はトラスツズマブを含む抗HER2薬が極めて奏効したHER2陽性多発転移腺癌の一例を報告する。本症例は56歳男性,頸部腫瘤の精査の結果,多発頸部リンパ節腫大,甲状腺左葉腫瘤,腰椎転移および多発肺腫瘤を認めた。頸部リンパ節はアポクリン分化を伴う腺癌でAR陽性,GCDFP-15陽性であった。その他画像検査で原発巣は同定できず,甲状腺癌や唾液腺癌を疑う所見も見られなかった。原発不明癌として治療を開始すると同時に遺伝子発現プロファイルよる遺伝子検索を行った。その結果ERBB2の高度増幅を認め,免疫染色でもHER2が強陽性であった。HER2陽性乳癌に準じた治療を3年間継続し,多発転移は著明に縮小し,部分奏効を維持しながら外来加療中である。
著者関連情報
© 2025 日本頭頸部癌学会
前の記事
feedback
Top