抄録
口腔扁平上皮癌20例を対象として化学療法後の desmoplastic response の意義について検討を行った。20例中17例 (85.0%) に desmoplastic response が認められたが, 癌実質の破壊の程度と desmoplastic response の程度との間には明らかな相関関係は認められなかった。また, 癌実質の傷害は軽度であっても癌実質全体が desmoplastic response によって取り囲まれていた症例も認められ, desmoplastic response は実質の崩壊による組織修復としてだけ生ずるのではなく, 宿主側の防御機転として癌の浸潤を防ぐ役割を果たしている可能性が示唆された。したがって, 化学療法後の desmoplastic response の機序について今後さらに検討する必要があると考えられた。