抄録
本研究の目的は直接骨に支持されない可動部粘膜の硬さを客観的, 定量的に測定することであり, そのため, 口腔粘膜硬さ測定器を考案試作し臨床に応用した。試作されたハンディー硬さ測定器の直径2mmの探触子を粘膜に2mm圧接し, 生じた応力を硬さとして定量的に表示した。本測定器によりフリーハンドで硬さを測定しても実用上誤差は許容範囲にあることが既に実験的に確かめられている。
本機を用いて硬さを測定したところ, 舌, 口底, 頬粘膜の扁平上皮癌32例の硬さは平均37.7gfであり, コントロールは平均4.8gfであった。コントロールと比較して扁平上皮癌の硬さは, 2.3~19.1倍を示し, 腫瘍が有意 (p<0.001) に硬いことが確かめられ, 腫瘍範囲の確定のための強力な補助診断となり得ることが示唆された。