抄録
顎骨切除後には, 咀嚼, 嚥下, 発音などの口腔機能を回復することが要求される。そのためには, 十分に安定した顎補綴物の装着が必要である。1980年代に, 我が国へも顎骨と直接結合するチタニウム製のデンタルインプラントが紹介され, 通常の歯牙欠損症例に応用されるようになってきた。佐賀医科大学歯科口腔外科教室では, 1988年より口腔外科疾患患者の術後機能の回復にブローネマルクインプラントを応用し始めた。オッセオインテグレイテイッドインプラントは, 顎骨切除症例の顎義歯の固定源として応用できるものの, 下記のような問題もある。
1) 顎骨の解剖学的問題, 2) 残存顎骨の形態や位置, 3) 移植骨の大きさや形態, 4) インプラント周囲の皮弁の不適合性, 5) インプラント義歯や口腔内に装着する際の操作性, 6) インプラントによる咀嚼機能回復の時期, 7) 顎骨切除症例へ応用した場合のインプラントの成功率, 8) インプラントによる咀嚼機能回復に要する費用などである。
本論文では, それぞれの問題に関しての対応を報告した。