抄録
頭頸部は, 脂肪組織に富み, 解剖学的に複雑であるため, MR画像において, 病変の描出が困難なことが多い。われわれは, 水と脂肪の共鳴周波数差を利用した化学シフト画像による脂肪抑制法の有用性について検討した。頭頸部悪性腫瘍15例において, 脂肪抑制併用Gd-DTPA造影T1強調像と従来の造影前, 造影後T1強調およびT2強調像とを原発病変とリンパ節の検出能, 進展範囲の描出能について, 4段階 (Grade 0-3) で点数化して評価した。脂肪抑制造影T1強調像 (平均2.93) では, 14例に Grade 3が得られ, T1強調 (0.73), 造影T1強調 (1.80) およびT2強調 (1.67) より優れていた。脂肪抑制造影T1強調像は骨髄や頬部など脂肪を含む領域への腫瘍の浸潤範囲の明瞭な描出のみならず, リンパ節中央部壊死や節外浸潤の検出にも特に有用であった。脂肪抑制法は撮像時間が短く, 後処理も必要ないため, 手術手技の決定, 治療の効果判定, 経過観察など臨床上極めて有用であると思われた。