頭頸部腫瘍
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口腔再建における大胸筋皮弁の合理的な用い方
清川 兼輔田井 良明矢永 博子井上 要二郎山内 俊彦力丸 英明森 一功中島 格
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キーワード: 大胸筋皮弁, 口腔再建
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1997 年 23 巻 3 号 p. 535-541

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抄録

大胸筋皮弁は血管吻合や体位変換を必要とせず口腔再建において普遍的なFlapである。しかし, (1)血行障害 (部分壊死) (2)頚部の拘縮や再建部位の下方牽引(3)胸部の変形の問題点がある。大胸筋皮弁の有用性を再認識するためには, これらの問題点の解決が必要である。
血行障害については, 次の4点を行うことで解決された。(1) 皮島の採取部位; 皮島内に第4肋間で乳輪の内側1~2cmの部にある内胸動脈前肋間枝の穿通枝を含み, 皮島の下端は大胸筋の下縁を越えない。(2) 皮島の形状と大きさ; 欠損部の形状を正確に型どりそれより1~2割大きめの皮島を採取。(3) 大胸筋の胸壁からの剥離; 第4, 5, 6間穿通枝をできるだけ胸壁側で切離しこれらの穿通枝の損傷を防止。(4) 皮島の到達距離の延長; 安全な範囲内での皮島の採取と Pedicle への緊張や圧迫の防止。
頸部の拘縮や再建部位の下方牽引については, Pedicle の多くの部分を血管柄としたことと鎖骨下を通した到達距離の延長法によって Pedicle 部分に余裕が生じたことで解決された。
胸部の変形については, 大胸筋の鎖骨部と胸骨部の一部を胸部に温存することで鎖骨下部を陥凹変形が, 側胸部にかけてのV字状の皮弁を用いることで前胸部の長い瘢痕と乳輪乳頭の偏位が防止できた。
大胸筋皮弁の安全な挙上法と鎖骨下を通した移動法の工夫によって大胸筋皮弁の問題点の多くが解決された。特に最大の問題点である血行障害において Microsurgery と変わらない96%の成功率が得られ, 大胸筋皮弁の安全性が確立された。

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© 日本頭頸部癌学会
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