1997 年 23 巻 3 号 p. 542-546
遊離空腸移植術は, 通常の咽喉食摘後の頚部食道欠損の再建に標準的術式として多くの施設で用いられている。その理由は, 血行が良く術後合併症が少ない, ドナーの犠牲が少ない, 食道側の口径と空腸の口径が一致する, 採取が容易である, などが挙げられる。これに対し, 進行癌のため咽頭側の切除断端口径が大きくなり空腸移植では良い嚥下機能が得難いと思われる症例に対して, われわれは遊離結腸移植術を用い良好な結果を得ている。結腸は口径が太い, 血管柄が長い, 長い直線状の腸管が移植できる, 蠕動様運動が少ない, などの利点が挙げられる。
本稿ではわれわれが用いているこれら遊離腸管移植の実際の手技について述べる。