1999 年 25 巻 1 号 p. 148-152
アデノ随伴ウイルス (AAV) は, パルボウイルス科デペンドウイルス属のウイルスで, 近年, 遺伝子治療のためのベクターに応用しようとする試みが活発になってきている。AAVベクターによる遺伝子導入では, 筋細胞や神経系細胞, 気道上皮細胞などで有用性が示されているが, 癌細胞を標的とした報告は少ない。
今回, 私共は, AAVベクターを用いて頭頸部癌由来の細胞株NKO-1に対してLacZ遺伝子の導入を行った。LacZ遺伝子の発現効率は, ベクター量依存性に増加し, 細胞あたり2×105のベクターを感染させると80%を超える細胞で発現が得られた。このことはAAVベクターが頭頸部癌遺伝子治療へ応用可能であることを示唆している。