抄録
UICCによって1997年に改定されたTNM分類 (新分類) の問題点を明らかにすべく, 当院にX線CTが導入された1980年から1998年までに放射線治療が施行された上咽頭癌77例のうち低分化型扁平上皮癌59例を対象として, 新分類と1987年TNM分類 (旧分類) とを比較検討し以下の結論を得た。X線CTやMRIによる評価が必須となったために, 古い症例の新分類への翻訳が不可能となった。旧分類でIV期に分類されていた症例がIIb期, III期, IVa期, IVb期, IVc期の5つに細分されたことで, IV期への症例の偏りが新分類では是正されたが, 依然としてIV期の中に治癒可能な症例が含まれている。N分類にリンパ節の高さの概念が導入されたが, 放射線治療が主体である上咽頭癌ではリンパ節の高さよりもリンパ節転移の大きさの方を重視すべきである。上咽頭腫瘍には, 進展様式や放射線感受性の異なる腫瘍が存在することから, 組織型や分化度を考慮にいれた病期分類が必要がある。