抄録
下咽頭癌の手術で腫瘍が限局している場合に, 喉頭下咽頭の部分切除が可能な症例もある。この場合, 患者のQOLを向上できるものとして,
1. 手術に対する肉体的な負担の軽減
2. 早期の経口的食事摂取
3. 早期の退院と社会復帰
4. 発声機能の温存
5. 完全なる喉頭機能の温存
などが考えられる。
片側梨状陥凹や輪状後部に限局した下咽頭癌では腫瘍の摘出後, 残存した喉頭から軟骨を抜き取り, 粘膜筋弁を作成し, 残存した下咽頭粘膜と縫合して, 一期的に下咽頭頸部食道を再建することができる。これによって, 患者の肉体的な負担の軽減, 早期の経口的食事摂取, 早期の退院と社会復帰が期待できる。完全なる喉頭機能の温存には, 術後の誤嚥がその鍵を握っている。片側梨状陥凹に限局した下咽頭癌では, 健側 hemi-larynx を温存し, 対側を皮弁や筋皮弁を用いて再建することで, 喉頭機能を完全に温存することが可能である。