甲状腺癌摘出手術において反回神経合併切除後の嗄声を予防する目的で切除側の喉頭内に神経筋を移植する手術を8例に行った。切除側の甲状軟骨下角を切離して甲状軟骨板を飜転・挙上し, 約1×2cm大の胸骨舌骨筋を頸神経罠が付いたまま甲状披裂筋の外方に挿入し縫合・固定した。高齢男性の1例に喉頭浮腫が生じた。術直後から移植側の声帯は傍正中から正中に位置し声帯萎縮なく良好な音声が維持された。最長16ケ月の観察で, 声帯萎縮が生じた例や音声や音声機能が明らかに悪化した例はなかった。本手術は, 反回神経合併切除時の嗄声を予防するのに有用であると考えられた。