抄録
誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS) は主にマクロファージなどの免疫系の細胞に含有され, 炎症機転に伴い発現誘導される。iNOS生成は他のアイソフォームである神経型NOSや内皮型NOSに比べ約100倍のNO合成能を有する。したがって, iNOS発現誘導による過剰なNO生成は正常細胞のDNAを傷害し突然変異を誘導するなど癌の発生に深く関与すると考えられている。今回, 筆者らは初回治療を行った喉頭癌63例を対象にiNOSの発現を免疫組織学的に同定し, 臨床像, 病理組織像および予後との関連性について検討した。63例中36例 (57.1%) の癌組織においてiNOS陽性であった。放射線単独療法後の局所再発例ではiNOSスコアが有意に高値を示した。また, iNOS陽性例は陰性例と比べて有意に生存率が低かった。以上よりiNOSの発現が早期喉頭癌における局所再発や予後を推測する一つの因子となりえる可能性が示唆された。