東京保健科学学会誌
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脳血管疾患の既往をもつ在宅療養者のQOLに影響を及ぼす要因分析 : 老年者と壮年者の比較を通して
習田 明裕
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2000 年 3 巻 2 号 p. 88-97

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抄録
わが国では最近「脳血管疾患」による死亡率は急速に減少しているが, その発症率は今もなお高く, 何らかの後遺症を残しながら生活する高齢な在宅療養者が増えている。しかし従来の脳血管疾患の予後に関する研究の多くは, 疾患に伴う機能障害やADL能力の予後, あるいは生存率との関連に力点が置かれているものが多く, QOLとの関連で対象の生活を総合的にとらえた研究はあまり多くない。よって本研究においては脳血管疾患の既往をもつ高齢な住宅療養者のQOLを高める看護援助に役立てるために, T大学附属病院脳神経外科病棟に入院した患者について退院後の追跡調査を行い, 脳血管疾患の既往をもつ在宅療養者のQOLに影響する関連要因とその特徴について老年者と壮年者の比較によって検討した。その結果以下のような知見を得た。1.老年者は, 身体的レベルが低くても必ずしもQOL指標のレベルが低いとはいえず, 多くの要因が関与していた。2.老年者は壮年者に比べ, 視覚不良, 聴覚不良といった感覚的な衰えがQOLに強く影響していた。またADL自立度及び失禁や排泄といった介護負担度に影響する項目がQOLに特に強く影響していた。3.壮年者に比べ老年者では, 介護者の職業の有無, 介護者の健康, 介護疲労感など家族介護者の状況がQOLに大きく影響していた。4.老年者ではADL要介助と麻痺の重症度は, 非特異的・特異的身体症状ではマイナスに寄与している一方, 社会的・主観的指標においてはプラスに寄与するといった逆の相関がみられた。今後は縦断的な調査を行いQOLの推移を把握する一方, 上記結果から得られた老年者の特性を充分に構造化し, 疾患の特異性と合わせて, QOLスケールの水準を高めていく必要があることが示唆された。
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2000 日本保健科学学会
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