東京保健科学学会誌
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微少密封線源と多線式比例計数箱(MWPC)を用いた被照射体透過γ/X線の測定
喜多村 章一石原 信弘小濱 太郎
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2001 年 4 巻 3 号 p. 154-162

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抄録

本研究は手軽に使える(法規制外)微少密封線源と多線式比例計数箱(MWPC)を組み合わせて, 密封線源からのγ/X線を物質に照射し, 物質の厚さの変化と透過γ/X線の計測数との関係を測定することによって透視画像作成の可能性について検討した。 MWPCは光量子1個ずつを検出できるので, 線量を量子限界まで下げることができる。このため, 感度はフイルムに比べると10倍以上高く, またコントラストのダイナミックレンジも広い。 使用時点で351kBqの^<241>Amからのγ線(11.9keV〜59.54keV)および崩壊生成物NpからのLX線がアルミ板を透過する量を板の厚みを変えて測定し, 実効エネルギーで表わされる減衰曲線の実験式を得た。この線源からのγ/X線をアルミパイプ(直径2.6cm, 肉厚0.2cm)と薄い円柱形容器中の水(直径2.6cm)に照射して, MWPCの出力から, 厚さと形状を反映した強度分布を得た。そしてこの強度分布を上に述べた実験式で矛盾無く記述した。植物の葉(もみじ, 松葉)は薄いので, 透過力の弱い(エネルギーの低い)X線(ECによる6keVのKX線, 線源は使用時点で65kBqの^<55>Fe)を照射して, 葉の形状を反映した強度分布を得た。このことより, 透視画像作成の可能性が暗示された。実用化には, 線源の形状, 周辺バックグラウンドに対する測定器のS/N比の向上, 高速測定データ収集システムの開発などが重要な課題となる。

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2001 日本保健科学学会
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