本研究は,4人の子どもを産み育ててきた一人の女性の経過とその背景を明らかにすることを目的に,半構成式インタビューを行った。その結果,(1)自分の生育環境と同じように子どもは多い方がよいと思っていたこと。(2)夫と上の子を含めた身近な育児サポートがあり,それまでの育児経験から(3)育児負担は子ども数に比例して増えていないと感じていたこと。(4)育児による自分の時間が少ないことを否定的に捉えていないこと。(5)子育てで生ずる経済的問題を解決可能と考えたこと。(6)自分に合う出産場所を自分で選択してきたこと。(7)家族全員が健康で経過したこと。そして,育児をする中で様々な葛藤や苦悩を経験しながらも,(8)子どもをもつことでの人間関係の広がり,楽しさや幸せ,面白さを感じていることが明らかになった。これらのことが入れ替わり積み重なりながら経過し,特に(2)のことは常に事例の背景として影響していた。