抄録
Z-Leu-Leu-Leu-H(Z-LLL-H)は内因性の神経成長因子(NGF)と同様に神経突起伸長を誘発する。今回,我々は蛍光標識したトリペプチド誘導体(Dns-LLL-H)を合成し,生きたPC12細胞におけるDns-LLL-Hの局在部位を蛍光顕微鏡により経時的に観察したので報告する。合成したDns-LLL-Hは,Z-LLL-Hより低濃度で神経突起伸長を誘発した。Z-LLL-Hと同様の作用機序を持つと考えられるDns-LLL-Hの局在部位を蛍光顕微鏡により観察した。Dns-LLL-Hは,細胞体,突起内部,成長円錐中心部に局在したが,核や成長円錐先端部である糸状仮足には局在しなかった。これら局在部位の特徴から,Dns-LLL-Hは短時間(10分)で膜透過し,細胞小器官に局在する可能性が示された。