魚類学雑誌
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はぜつぼ漁業からみたウロハゼの生態
千田 哲資星野 暹
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1970 年 17 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

岡山県を中心とする瀬戸内海の一部にウロハゼを対象としておこなわれるはぜつぼ漁業の漁期は6月下旬-8月上旬, 漁場は沿岸の浅海域で, 漁期を通じ日々の漁獲率は20%程度である.はぜつぼで獲れるのはほとんどウロハゼに限られ, 他にはテンジクダイ, メバルなどが極く稀に漁獲される.1個のつぼで同時に獲れるウロハゼは1尾または2尾である.1尾のときは雄または雌で前者であることの方が多い.2尾のときは原則として雌雄で, 通常雄の方が大きい.雌の卵巣は発達し, つぼに入るのは産卵前行動としての巣ごもりである.近年一部の地方で用いられている木箱による漁獲率は従来のはぜつぼによるそれよりよく, ウロハゼの産卵室としてよりすぐれている.はぜつぼ漁業が漁業として成立することは, 天然の産卵室が相対的に不足していることを示すと考えられる.産卵群は体長により四つの成分に分けられるが, これらの各成分が各年令群に対応するか否か明らかでない.雌は雄よりも成長が遅いように思われ, 最大体長は雄が大きい.全国的にみたとき本種はほとんど利用されていない.食用としての利用とともに, 海産動物の幼生飼育にあたって餌料として本種の孵化仔魚を利用することも可能と思われる.

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