魚類学雑誌
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キンギョの卵巣にみられた特殊な雌雄同体的構造
高橋 裕哉
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1970 年 17 巻 2 号 p. 67-73

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抄録

キンギョ生殖腺の発達の組織学的研究の過程で卵巣に痕跡的精巣組織をもつ雌成魚4尾を見出した.これらの卵巣では卵形成は正常に進行しており, その進行の度合は同系の正常雌魚の卵巣と差がなかった.しかし卵巣腔に面する生殖上皮は, 正常卵巣ではごく少数の静止期卵原細胞巣が散在するのみであったが, この4尾の卵巣では巨大かっ多数の生殖細胞集塊の不規則かっ密な配列によって著るしく肥厚していた。この集塊のあるものは種々の移行的な大きさのゴニァ型の細胞より成り, 活発な増殖分裂が認められた.また他種の集塊は, その大きさおよび核の細胞学的特徴から, 第一および第二精母細胞とみなしうる細胞を含み, さらに減数第一分裂中期と推定される分裂像を示す細胞をも有していた。しかし精細胞および精子の形成は観察されず, 精子形成の中断を示すと思われる退化途上の細胞集団がみられた。このように, この4尾の卵巣生殖上皮の異常が痕跡的精巣組織の残存によることが確かめられた。この型の生殖腺形態異常は本来雌雄異体性の魚種に偶発する雌雄同体性の新型と思われるが, その発現の原因は不明である。

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