スズキの卵巣の成熟過程は基本的には他の硬骨魚類と大差ないようであるが, 卵黄胞 (yolk vesicle) の分布が非常にまばらな点と成熟過程が速やかに進行する点が特徴的である.これらの点に関する生理学的な意義は明かでないが, 成熟過程の進行はこの種の生活史と密接な関連をもっているようである. また卵胞細胞 (follicle cell) は成熟過程において顕著に変化するが, それは崩壊卵の吸収過程の際にとくに発達する.このように卵胞細胞は卵母細胞 (oocyte) に栄養を補給する機能と同時に崩壊卵の吸収にも主要な役割を果しており, 精巣における精上皮細胞とその起源を同じくしていることを示唆している.顕微鏡観察および生殖腺指数の変化から推して, 産卵期は12月下旬から1月中旬にかけての短期間で, 成熟過程の個体差はほとんどないようである.また雌の生物学的最小形は体長350mm前後で, 2~3年で成熟する