抄録
1964年4月から12月までの間に, 上信越高原国立公園の妙高山麓を流れる関川の1支流から採集したイワナ106個体の消化管内容物を調べた. 秋から翌春までの冬季は, 水生底生動物が主要食餌であり, 5月中旬から盛夏にかけては, 陸上昆虫の摂食量が増加する.これらの陸上昆虫は, 川岸近辺に巣孔をもつ種類が多く, 好飛翔性のものは含まれていない.また, 捕食されていた水生昆虫は, 携巣型のトビケラが大半を占めていた.このことは, イワナが好んで選択的にトビケラなどを捕えるのではなく, むしろ餌料生物のおかれた状態に基づく利用容易性に起因しているらしい.なお, 産卵期でも成熟成魚が摂食活動を続けていることは, 非洞遊性イワナに産後艶死の現象が見当らないこ卵とと関連して, 注目される.