抄録
ニジマス幽門垂の上皮細胞を主として, 電顕的に観察した.ニジマス幽門垂は上皮, 固有層, 内顆粒層, 内緻密層, 外顆粒層, 外緻密層, 筋層および漿膜からなる.上皮細胞の微絨毛間の形質膜上には胞飲作用 (pinocytosis) がみられる.terminalweb下には滑面および粗面小胞体からなる管網状系 (tubulo-reticularsystem) がよく発達している.糸粒体の分布は細胞上端部から核上部にかけて次第に減少する傾向がある.
ゴルジ装置はよく発達し, 2~3個のゴルジ装置が1つのゴルジ野を形成している。ゴルジ野の上部にはしばしば約4~5μ の円形または卵形の封入体がみられる。これは限界膜をもち, 一種のcytolysomeと考えられる.
細胞質内にはやや電子密度の低い微細顆粒状物質で満たされた嚢状あるいは胞状の小体が比較的多数散在するが, これは粗面小胞体に由来する所見がある.核下部には比較的よく発達した層板状膜構造がみられるが, しばしば形質膜と連続している.
ニジマス幽門垂では脂質のみならず蛋白質の吸収も行なわれるものと解釈される.