1973年の春と秋に沖縄県石垣島で体長30.9~171.5mmのヒレナマズ (Clarias fuscus) が採集された. ヒレナマズ科 (Clariidae) の採集記録は日本では初めてのことである.
本種はフィリピン, 中国大陸, 台湾に広く分布するが, 近縁のClarias batrachusとのちがいにっいて従来の知見は貧弱なので, いくっかの分類形質を比較した.この結果, 腹椎骨数・背鰭条数・鰓紀数・胸鰭棘の形態・核型などに相違が見出された.
なお, フィリピン・台湾・石垣島産のヒレナマズにっいて分類形質の変異を調べた.石垣島のヒレナマズが移殖魚の自然繁殖したものに由来するか否かは明らかではないが, 台湾産のものと石垣島産のものとは, 分類形質がかならずしも一致しないようである.