小笠原諸島, 八重山諸島, 沖縄, 三宅島のクマノミの地理的変異を記載し, 三宅島における, 色彩と群内序列との関係を論じた. 八重山の個体は, 最も色彩の変異が激しいが, 性差は顕著でない. 沖縄の場合は, 成熟雄は常に尾鰭がオレンジ色に縁取られているが, 成熟雌では一様に黄色である. 九州から三宅島の個体では, 序列の低い個体は雌雄共に, 沖縄の雄と同様尾鰭がオレンジで縁取られる. 優占雄では尾鰭は殆んど完全にオレンジ色であるが, 雌では淡黄色である. 臀鰭と腹鰭は優占度合に応じて暗色となるる 三宅島の個体は, 沖縄産に較べ, 僅かに大きく, 僅かに計数計質が高く, 体側の縞模様が狭い. 小笠原では黒化個体が見られ, 雌雄差はない. 黒化個体はRadianthus属のイソギンチャクに住む. 沖縄と三宅島のハタゴイソギンチャクに住むクマノミも暗色である.