魚類学雑誌
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アサヒアナハゼ(カジ力科)の表皮にみられる顆粒細胞の光単ならびに電子顕微鏡による観察
佐藤 光雄
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1978 年 24 巻 4 号 p. 231-238

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抄録
アサヒアナハゼの顆粒細胞は, 主として皮膚表皮の中層に存在する大型細胞である.本細胞は, Thomson (1969) がハコフグの一種Ostracion meleagrisで記載した棍状細胞 (club cell) の発達段階に, 類似した発達経過をたどるものと考えられる。発達段階II~IIIの本細胞は, 多数の酸好性顆粒を含み, 予備的な組織化学検索から, 芳香族および塩基性アミノ酸を含むたんぱく質の存在が予想される.前記の段階にある本細胞の電顕像をみると, 細胞の主要部は1個の中心空胞 (centralvacuole) によって占められ, この空胞中には比較的電子密度の高い顆粒が多数散在している。空胞周辺の細胞質には, かなり大きい胞状体の層があり, これらの胞状体中にも上記同様の顆粒が含まれる。この胞状体が破れ, 顆粒を中心胞内へ放出していると考えられる電顕像がみられることから, 胞状体の相次ぐ破裂と含有顆粒の放出とによって, 中心胞が形成されるものと推定される。本細胞をもつ硬骨魚類の皮膚組織に共通する特徴の有無, ならびに本細胞の系統的意義については, 今後の検討が必要である。なお, 本細胞の機能についても若干の考察を試みた.
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