抄録
人為成熟誘導試験のため1976年秋, 青森県の河川で採捕した下りウナギ雌の1尾 (全長65.9cm, 体重5309) に, 催熟処理開始前の開腹生検により, 雌雄同体型の生殖腺を見出した.この生殖腺は外観的にも組織学的にも正常な卵巣組織を主体としたが, 生殖腺の全長にわたる末端縁に無数の精巣組織の小塊を “ふさ飾り” 状に有していた.この精巣組織は組織学的に正常で, 結合組織層により卵巣組織から分離されていた.この個体に生殖腺刺激ホルモンを投与し, 処理中定期的に生殖腺の生検をくり返した結果, 雌雄同体生殖腺の卵巣部・精巣部の双方とも処理に伴う成熟の進行をみせることが確かめられたが, 卵巣卵の発達が急速かつ変異に富むことも知られた.