抄録
タウエガジ科の1新種ベニツケギンポDictyosomarubrimaculataを記載した。本種は, 従来, 同属のダイナンギンポD.burgeriと混同して扱われていたため, D.burgeriの再記載も行なった。両種は側線形態, 不対鰭条数, 体色等の相違により区別される。さらに, D.burgeriに地理的変異の2型が認められたが, より詳細な分布の検討が必要であると考えられたので, 今回の報告では, 本州中部太平洋岸から得られたfbrm aと日本海及びその周辺水域から得られたfbrm bとに暫定的に分けるにとどめた.
D.rubrimaculataとD.burgeriの2型は, それぞれ同所的に分布しており, 千葉県小湊と神奈川県横須賀での水中観察の結果では, 両者は棲み分けを行なっていた。すなわち, D.rubrimaculataは所謂ガラモ場と呼ばれる潮下帯の一部に, 一方D.burgeriのform aは岩礁の潮間帯に主に見い出される.
D.burgeriにおける脊椎骨数の増加, 腹鰭の退縮などの形態的特徴と上記の生活場所に関しての知見は, D.urgeriがより特化した種であることを示唆している.