魚類学雑誌
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水槽内で観察されたヨスジフエダイ Lad anus kasmiraの産卵習性と卵および仔魚
鈴木 克美日置 勝三
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1979 年 26 巻 2 号 p. 161-166

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抄録

小笠原群島近海で採集されたヨスジフエダイが1976年8月に水槽内で合計5回産卵した.本種の産卵行動は1尾の雄の求愛で始まり, やがて雌雄1対となって螺旋状に水面に向かって上昇する。産卵の直前には雌雄の上昇途中で, 水槽中層付近に集合している本種の他の10教尾の雌雄がこれに参加し, 水面直下で1団となって産卵する.フエダイ科魚類の受精卵及び初期仔状は本種で初めて記載された、本種の受精卵は油球1個を有する卵径0.78~0.85mmの球形分離浮性卵である。水温24.8~26.6QCで受精18時間後に孵化が始まり, その1時間20分後にすべての卵が孵化する。孵化直後の仔魚は全長1.83mm, 卵黄は長卵形で大きく, その先端は吻端より前方に突出する。油球は卵黄先端近くにあり, 卵黄表面より突出しない.
孵化3目後の仔魚は全長3.20mm, 卵黄を吸収し口と肛門が開く。本種の孵化直後の仔魚の形質は本科と比較的近縁とされるハタ類 (スズキ科), イトヨリダイ科, イサキ科の既知種のそれとは著しく相違し, かっ, 本種のそれと同様な形質の仔魚をスズキ亜目の既知種からは見出すことができなかった。

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