1983 年 30 巻 3 号 p. 227-234
多くのサケ科魚類の雄には, 降海型と河川残留型の二型がみられる.然別湖に生息する陸封型オショロコマ (ミヤベイワナ) も同様に, 雄の二型が知られている.1982年9月から10月にかけて, 放精.産卵に至る23例の産卵行動を観察した.pairは体の大きな降湖型で形成され, 体の小さな河川残留型数尾がその回りに集中した.残留型はpairを形成する降湖型雌雄にはげしく追い払われた.pairの放精放卵中, 残留型には二つの行動が認められた.一つはすばやく産卵床に突入して放精し, 他は卵を食べる, という行動であった.こうした行動は, 他の動物にみられるstreakingとよく似ていた.これはpairを形成できない残留型が, 自らの仔を残すための繁殖戦略であるかもしれない.