魚類学雑誌
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北太平洋におけるスチールヘッド・トラウト及びカムチャツカン・トラウトの季節的分布とその豊度
岡崎 登志夫
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1983 年 30 巻 3 号 p. 235-246

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抄録

北太平洋には北米大陸の諸河川を起源とするスチールヘッド・トラウトが広範に分布していることが知られている。また, アジア側にはカムチャツカ半島を中心とした地域にこれと極めて近縁なカムチャツカン・トラウトが分布しており, その降海型が北太平洋にも分布することが推定されていた.1972~82年に日本のサケ・マス調査活動によってスチールヘッドとして記録された漁獲データに基づき, 北太平洋における両種の分布, 豊度及び季節移動について検討した.
分布域は春から夏にかけて北太平洋の西部にまで広がり, 6月以降はオホーツク海にも分布が認められた。潮上地域及び湖上時期との関連から, オホーツク海や北太平洋の西部で漁獲され, スチールヘッドとして記録されたものの大部分はカムチャッカン・トラウトであったものと考えられた。季節的分布の推移から, これらは北太平洋の中部以東で越冬し, その後カムチャツカの潮上河川へ向けて北西へ回遊するものと考えられた.一方, 標識放流結果からはスチールヘッドが夏季には少なくとも東経175° 付近にまで分布を広げていることが確認された。北太平洋での分布は東西に帯状に連なっており, その豊度には特に切目がみられないことから, 両種の海洋生活期中における分布は大きく重複しているものと考えられた.

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