抄録
カンキョウカジカはnest spawnerであり, 雄はふつう数尾の雌と次々に産卵し, 産着卵を保護する習性をもつ.こうした一夫多妻の繁殖システム, 卵保護との関りから, 本種の成魚には, 体サイズおよび口のサイズ, 唇鰭軟条の長さに明瞭な性的二型が認められた.雄は雌より体サイズが大型で, 大きい口, 臀鰭後部に長い軟条をもつ.大型の雄は小型の雄よりも, より好適な産卵巣の位置を獲得し, 捕食魚から産着卵を守るうえで有利であろう.また, 口のサイズについても同様の理由で, 大きい口をもつ雄の方が有利であるだろうと予想される.従って, これらの性的二型は性選択によって発達した, と考えられる.