魚類学雑誌
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カダヤシ黒色素胞における色素顆粒移動のビデオおよび電子顕微鏡による解析
中村 直志池田 弥生小比賀 正敬
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1987 年 34 巻 3 号 p. 351-360

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抄録

カダヤシ鱗黒色素胞の色素穎粒移動および微小管の役割について考察した.色素顆粒凝集速度は反応初期の10-20秒間が最大で, その後は急激に減少した.一方拡散はほぼ等速移動であり, 速度は色素顆粒凝集に比較して小さかった.また凝集においては突起の細い部分で速く, 太い部分で遅かったが, 拡散においては突起の太さにかかわらずほぼ一定であった.色素顆粒凝集に伴って突起の扁平化が起こるが, それに付随して細胞膜を裏打ちする微小管 (CMT) も減少した.一方拡散においては, 色素顆粒移動に先行して突起中への細胞質基質の流動が起こり元の形態を回復することが認められた.さらに低温処理による微小管の消失は, 細胞膜と色素顆粒間の距離を有意に短縮した.このようにCMTは色素顆粒移動を円滑にするための構造的役割を担っていると考えられる.また数種の代謝阻害剤の実験結果から, 色素顆粒凝集はダイニン依存性であることが示唆されたが, 色素顆粒拡散はチューブリンーダイニン系あるいはアクチンーミオシン系の何れにも非依存性であることが示唆された.

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