魚類学雑誌
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雄物川水系におけるイバラトミヨ (Pungitius pungitius) とトミヨ (P. sinensis) の遺伝的差異
高田 啓介後藤 晃山崎 文雄
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1987 年 34 巻 3 号 p. 384-386

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抄録

雄物川水系平鹿の小さな池に同所的に生息しているイバラトミヨとトミヨの生殖的隔離の有無をアイソザイムを用いて調査した.鱗板形態から区分されたイバラトミヨとトミヨの集団問には, 13遺伝子座中の1遺伝子座で対立遺伝子の置換が認められた.また, イバラトミヨに区分された集団 (40個体) の中には, そのアイソザイム・パタンからトミョとの雑種と推定される2個体が検出された.この2個体をイバラトミヨから除くと, 両集団問には5遺伝子座で対立遺伝子の置換が存在することになる.従って, この池のイバラトミヨとトミョには, かなり厳密な生殖的隔離が存在すると考えられた.また, 雑種個体の出現頻度が低く, それらがF1雑種ではなくそれ以降の世代の雑種個体であったことから, 両集団問には, 交配前の隔離機構だけでなく, 交配後の隔離機構として雑種崩壊も機能している可能性が示唆された.

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