抄録
トビハタの学名は従来Trisotropis dermopterus (Temminck et Schlegel) とされていたが, Trisotropis GillはMycteroperca Gillのシノニムなので, 新属名Trisoを提唱する.本属の特徴は, 頭部が短く, 両眼間隔域が広く, 他のハタ族より前後に短い頭蓋骨をもち, 副蝶形骨が前方に傾くこと, 前頭骨と頭頂骨の隆起が高くて側方を向くこと, 背鰭鰭条数が多いこと, 食道部が袋状に広がっていることである.オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズから知られているAltiserranus woorei Whitleyはトビハタのシノニムである. Epinephelus multinotatus (Peters) を模式種とするAltiserranus WhitleyはEpinephelus Blochのシノニムである.トビハタは北半球では日本, 韓国, 台湾および中国に分布し, 南半球ではオーストラリアの東岸と西岸に分布する.すなわち, 本種は熱帯域には分布しない.トビハタ属は新世界のParanthias Guichenot に最も近縁と考えられる.