魚類学雑誌
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コイ科魚類コクレンにおける成長にともなう咽頭歯の形態変化
中島 経夫楽 侃埼
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1989 年 36 巻 1 号 p. 42-47

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抄録

コクレンの咽頭歯系の個体発生を観察すると, 位置An3に歯がまったく出現せず, 位置An2の第1世代の歯が第3交換波のものである.このことから, 本種の仔魚歯系は, C型である.したがって, 最初の歯が現われる位置, Ce0は, 成魚歯系の位置A3に対応する.各位置の最初の歯は, 円錐歯である.その後歯は交換によって, 小突起が縁どる狭い咬合面をもっ歯に変わる.この歯は, ロイシスカス段階と呼ばれ, コイ科魚類の仔魚に普遍的に見られるものである.さらに, 歯は咬合面が拡大し, 小突起の数が増してゆく.この小突起は, 咬合面の縁ばかりではなく, 咬合面全体に見られる.この歯は, レンギョ亜科魚類特有のものである.高度に特殊化しているにもかかわらず, コクレンの歯は, 単純な過程をへて形態形成が進む.このことは, レンギョ亜科魚類の系統発生を暗示しているように思える.

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