1990 年 37 巻 1 号 p. 49-55
キンギョとティラピアの内耳におけるミトコンドリアに富む細胞の分布と微細構造を, 光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察した.この細胞は両種ともに, 三半規管の膨大部, 通のう及び小のうに密集して存在していた.また, キンギョの横行管及びティラピァの壺においても認められた.しかし, キンギョの壺には観察されなかった.微細構造上の特徴としては, 細胞質は核以外ほとんどがミトコンドリアとそれを取り巻く滑面小胞体で占められ, 細胞基底部の下の結合組織中には内皮に小孔を有する毛細血管が多数存在していた.これらの形態的特徴から, ミトコンドリァに富む細胞は, おそらく内リンパ液のイオン調節に関与していると考えられる.