魚類学雑誌
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駿河湾産ラブカの生殖
田中 彰塩原 美敞日置 勝三阿部 秀直西 源二郎矢野 和成鈴木 克美
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1990 年 37 巻 3 号 p. 273-291

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抄録

駿河湾で採集した264個体のラブカChlamydoselachus anguineusをもとに, その生殖について調査した.本種は12月から7月の間に主に採集され, 成長段階および成熟・繁殖段階で棲息域を異にしていると考えられた.雄は全長1, 100mmですでに成熟しており, 雌は全長1,400-1, 500mmの間で成熟に達した.卵巣卵は重さ230-250gになると卵巣壁にある排卵孔から排卵され, 右輸卵管のみに入り, 卵殻腺で卵殻に包まれ, 子宮内に保持される.排卵は約2週間ごとに行われ, 排卵期間は数ヵ月におよぶと考えられる.初期の胚発生は非常におそく, 妊娠期間はすくなくとも3年半におよぶと考えられる.妊娠期間中, 卵巣卵は発達しない.胎仔が全長60-80mmに成長すると, 卵殻はそれからはがれ, 膣を通り排出される.胎仔は子宮内で主に卵黄によって全長約550mm, 体重380gまで成長し産まれる.全長400mm以上の胎仔は母体から栄養分を受けとっていると考えられる.1腹の胎仔数は2-10個体で平均6個体であった.雄の生殖腺指数は一年中ほとんど変化しなかった.雌は卵巣と子宮の状態から明瞭な繁殖時期がないと考えられる.卵殻に包まれた胎仔が最長134日海水中で生存し, その成長率は1月当り10-17mmであった.

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