マアジの体節血管の配列を腐食鋳型法によって観察した.水平隔壁中を走る側方体節血管のうちの尾部の列に限り, 各節で動・静脈が並走する複線化配列が認められた.複線化は末梢部までには至らない不完全なもので, 本来の体節血管と, 分枝の分布域が血合筋の肥厚部に限られる付加的な血管とに区別された.単線配列を示す他の体節血管にも, 付加的血管へと発達し得るような小血管が付随していた.付加的血管の出現は, 発達した尾部血合筋の血流要求が単線配列ではまかないきれなくなったことを示唆する.マアジは体節数が少なく個々の筋節が厚いので, 個々の体節血管への負荷がもともと大きく, 複線化によって過負荷を解消しながら血合筋を発達させてきたものと解釈した.