魚類学雑誌
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砕波帯におけるサバヒー仔魚の加入と生残
森岡 伸介大野 淳河野 博多紀 保彦
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1993 年 40 巻 2 号 p. 247-260

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抄録

フィリピン, パナイ島のイロイロ周辺での仔魚の採集と人工生産仔魚・天然仔魚の飼育実験に基づいて, 沿岸砕波帯でのサバヒー仔魚の加入・滞留の状況を検討した.砕波帯に出現する仔魚の全長は, その多く (2,386個体の96%) が12.0-15.0mmの狭い範囲に入り, 耳石輪紋数は15-20本の間に多く分布した (2,386個体の78%).天然仔魚では輪紋数が0.5-0.6本/日の割合で増加する経日変化が観察される場合があったが, この間の全長分布には経日的な増大は認あられなかった.給餌飼育下では, 人工, 天然仔魚ともに輪紋は1本/日の割合で増加したが, 天然仔魚を無給餌飼育すると, 増加率は0.4本/日に低下した.飼育下での天然仔魚の飢餓耐性は輪紋数の少ない個体ほど, つまり加入後間もない個体ほど強く, 50%致死日数は最長で9.9日であった.また, 天然仔魚の摂餌個体率は7.3%ときわめて低い値を示した.これらの結果から, 仔魚は沖合いでは良好な栄養条件下にあるが, 砕波帯では摂餌条件は劣悪化すると考えられた.砕波帯への加入時の日令を15日前後と推定し, 砕波帯では低い栄養状態により体成長が停滞し輪紋形成率が低下すると仮定すると, 滞留可能期間は約10日と推定された.

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