抄録
一夫多妻で雄が卵保護をするカンキョウカジカにおいて, 自然河川個体群での雄の繁殖期間 (実効繁殖期間), 雄の体長とその繁殖成功 (一繁殖期に得る受精卵の総数), および雄に雌の体長に応じた番い選好性があるか否かについて調査した.その結果, 生理的繁殖可能期間 (レ2ヵ月間) に比べて, 雄の実効繁殖期間は最長でも13-15日間で, 多くの場合は1週間以内と短かかった.雄は大型の個体ほど高い繁殖成功を得ていたが, それはその実効繁殖期間が長いからではなく, 雌が人型雄を選好するためであると考えられた.一方, 雄の体長とその雄が番った雌の体長との問には相関が認められなかった.この結果から, 本種には体長に依存した同類交配はなく, 雄は出会った雌とほぼ無選択に交配すると推察された.